れいていようをすぐ過零丁洋
辛苦遭逢起一経
干戈寥落四周星
山河破砕風飄絮
身世浮沈雨打萍
惶恐灘頭説惶恐
零丁洋裏歎零丁
人生自古誰無死
留取丹心照汗青
干戈寥落四周星
山河破砕風飄絮
身世浮沈雨打萍
惶恐灘頭説惶恐
零丁洋裏歎零丁
人生自古誰無死
留取丹心照汗青
詩
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
辛苦 遭逢 一経より起こる
干戈 寥落たり四周星
山河 破砕して風 絮を飄し
身世 浮沈して雨 萍を打つ
惶恐灘頭 惶恐を説き
零丁洋裏 零丁を歎く
人生 古より誰か死無からん
丹心を留取して汗青を照らさん
現代語訳
苦難に満ちた運命は、経書を学んで科挙に及第したことから始まった。戦いも衰え、はや四年が過ぎた。国土は砕け、風に舞う柳の綿のよう。我が身の浮き沈みは、雨に打たれる浮き草のよう。惶恐灘のほとりでは恐れおののいたことを語り、零丁洋の上ではひとり身の孤独を嘆く。人は昔から誰が死なずにいられよう。せめて真心を残して、歴史を照らしたいものだ。
原文と書き下し文の対照
辛苦遭逢起一経 ― 辛苦 遭逢 一経より起こる
干戈寥落四周星 ― 干戈 寥落たり四周星
山河破砕風飄絮 ― 山河 破砕して風 絮を飄し
身世浮沈雨打萍 ― 身世 浮沈して雨 萍を打つ
惶恐灘頭説惶恐 ― 惶恐灘頭 惶恐を説き
零丁洋裏歎零丁 ― 零丁洋裏 零丁を歎く
人生自古誰無死 ― 人生 古より誰か死無からん
留取丹心照汗青 ― 丹心を留取して汗青を照らさん
鑑賞
結びの「人生古より誰か死無からん、丹心を留取して汗青を照らさん」は、節義を貫く覚悟を示す名句として、日本でも広く知られています。
日本で親しまれる理由
「丹心を留取して汗青を照らさん」
語句
- 一経
- 一つの経書。科挙
- 四周星
- 四年
- 絮
- 柳の綿毛
- 萍
- 浮き草
- 丹心
- 真心
- 汗青
- 歴史書
作者
文天祥の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
祥興二年(1279年)、元軍に捕らえられた文天祥が、零丁洋(珠江河口)を護送される船中で、降伏勧告の手紙を求められて示したと伝えられる。