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こうろなん行路難

李白|盛唐|楽府(七言)

金樽清酒斗十千
玉盤珍羞直万銭
停杯投箸不能食
抜剣四顧心茫然
欲渡黄河氷塞川
将登太行雪満山
閑来垂釣碧渓上
忽復乗舟夢日辺
行路難 行路難
多岐路 今安在
長風破浪会有時
直挂雲帆済滄海

※日本で一般に読まれている本文によります。

書き下し文

金樽きんそんの清酒せいしゅ 斗と十千じっせん

玉盤ぎょくばんの珍羞ちんしゅう 直あたい万銭まんせん

杯はいを停とどめ箸はしを投とうじて食くらふ能あたはず

剣けんを抜ぬき四顧しこして心こころ茫然ぼうぜんたり

黄河こうがを渡わたらんと欲ほっすれば氷こおり 川かわを塞ふさぎ

将まさに太行たいこうに登のぼらんとすれば雪ゆき 山やまに満みつ

閑来かんらい 釣つりを垂たる碧渓へきけいの上ほとり

忽たちまち復また舟ふねに乗のりて日辺じっぺんを夢ゆめむ

行路こうろ難かたし 行路こうろ難かたし

岐路きろ多おおし 今いま安いずくにか在ある

長風ちょうふう 浪なみを破やぶる 会かならず時とき有あり

直ただちに雲帆うんぱんを挂かけて滄海そうかいを済わたらん

現代語訳

黄金の樽の美酒は一斗一万銭、玉の皿のごちそうも一万銭の値打ち。けれど杯を置き、箸を投げて、食べることができない。剣を抜いてあたりを見回しても、心は茫然とするばかり。黄河を渡ろうとすれば氷が川をふさぎ、太行山に登ろうとすれば雪が山を覆う。のんびり谷川で釣り糸を垂れたかと思えば、また舟に乗って都の天子のそばへ行く夢を見る。人生の道はなんと難しいことか。分かれ道ばかりで、私の道は今どこにあるのか。それでも、大風に乗って波を切り進む時がきっと来る。そのときは雲のような帆を高く掲げて、大海原を渡っていこう。

原文と書き下し文の対照

金樽清酒斗十千 ― 金樽の清酒 斗十千
玉盤珍羞直万銭 ― 玉盤の珍羞 直万銭
停杯投箸不能食 ― 杯を停め箸を投じて食らふ能はず
抜剣四顧心茫然 ― 剣を抜き四顧して心茫然たり
欲渡黄河氷塞川 ― 黄河を渡らんと欲すれば氷 川を塞ぎ
将登太行雪満山 ― 将に太行に登らんとすれば雪 山に満つ
閑来垂釣碧渓上 ― 閑来 釣を垂る碧渓の上
忽復乗舟夢日辺 ― 忽ち復た舟に乗りて日辺を夢む
行路難 行路難 ― 行路難し 行路難し
多岐路 今安在 ― 岐路多し 今安くにか在る
長風破浪会有時 ― 長風 浪を破る 会ず時有り
直挂雲帆済滄海 ― 直ちに雲帆を挂けて滄海を済らん

鑑賞

行き詰まりの苦しみを重ねたうえで、最後の二句で力強く希望へと転じます。「長風破浪」は今も励ましの言葉として広く使われます。

日本で親しまれる理由

「長風浪を破る会ず時有り」。励ましの句として人気

語句

珍羞
珍しいごちそう
日辺
太陽のそば。天子のいる都のたとえ
会
きっと(「まさに」と読む説もある)
滄海
青い大海原

作者

李白の生涯と作品一覧は作者ページへ。

作られた背景

三首連作の第一首。長安の宮廷を去った天宝三載(744年)ごろの作とする説がある。

この詩から生まれた名前

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