こうろほうのもとあらたにさんきょをぼくしそうどうはじめてなりたまたまとうへきにだいす香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁
日高睡足猶慵起
小閣重衾不怕寒
遺愛寺鐘欹枕聴
香炉峰雪撥簾看
匡廬便是逃名地
司馬仍為送老官
心泰身寧是帰処
故郷何独在長安
小閣重衾不怕寒
遺愛寺鐘欹枕聴
香炉峰雪撥簾看
匡廬便是逃名地
司馬仍為送老官
心泰身寧是帰処
故郷何独在長安
詩
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
日高く睡り足りて猶ほ起くるに慵し
小閣に衾を重ねて寒さを怕れず
遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き
香炉峰の雪は簾を撥げて看る
匡廬は便ち是れ名を逃るるの地
司馬は仍ほ老いを送るの官たり
心泰く身寧きは是れ帰処
故郷 何ぞ独り長安にのみ在らんや
現代語訳
日は高く昇り、十分に眠ったのにまだ起きるのがおっくうだ。小さな部屋で布団を重ねているので寒さも気にならない。遺愛寺の鐘は枕を傾けて聞き、香炉峰の雪はすだれをはね上げて眺める。廬山こそ名声から逃れて暮らすにふさわしい地、司馬という閑職も老後を送るにはちょうどよい。心も体も安らかな所こそ落ち着き先。故郷がどうして長安だけに限られようか。
原文と書き下し文の対照
日高睡足猶慵起 ― 日高く睡り足りて猶ほ起くるに慵し
小閣重衾不怕寒 ― 小閣に衾を重ねて寒さを怕れず
遺愛寺鐘欹枕聴 ― 遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き
香炉峰雪撥簾看 ― 香炉峰の雪は簾を撥げて看る
匡廬便是逃名地 ― 匡廬は便ち是れ名を逃るるの地
司馬仍為送老官 ― 司馬は仍ほ老いを送るの官たり
心泰身寧是帰処 ― 心泰く身寧きは是れ帰処
故郷何独在長安 ― 故郷 何ぞ独り長安にのみ在らんや
鑑賞
左遷先での暮らしを、強がりまじりに肯定する一首。「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」は、『枕草子』で中宮定子の問いに清少納言が御簾を上げて応えた逸話で、日本で特に有名です。
日本で親しまれる理由
「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」。『枕草子』の逸話で有名
語句
- 慵
- ものうい
- 欹枕
- 枕を傾けて耳を澄ます
- 撥
- はね上げる
- 匡廬
- 廬山
- 司馬
- 州の副官(閑職)
作者
白居易の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
元和十二年(817年)、江州司馬に左遷されていた白居易が、廬山の香炉峰のふもとに草堂を建てたときの作。五首連作のうちの一首。